第2回 学習ペースを保つ——AIをリマインダーにする

AI活用支援の実務家に聞く AIと一緒に学ぶ
佐藤 雄大(ブリッジドット株式会社 代表取締役)
ブリッジドット株式会社代表取締役の佐藤雄大です。教育工学が専門。AI活用支援を本業とする実務家として、放送大学、数理・データサイエンス・AI講座のWebサイト運営にも携わっています。本ニュースレターでは、毎号1テーマで「AIを学びの相棒にする」ためのヒントをお届けします。
創刊号でお約束した「今日から使えるヒント」、第1弾は学習ペースの保ち方です。今回から3回続きで、AIとの「つなぎ方」を少しずつ広げていきます。今回はAIとチャットするだけ。特別な設定はいりません。
第2回 学習ペースを保つ——AIをリマインダーにする
学習が止まる原因は意志の弱さではなく、計画の立て方にあります。エンジニアの知恵「アジャイル」をAIと一緒に学習へ持ち込む、3つの手順をお届けします。
学習が止まる「あるある」
授業や締切というペースメーカーが弱まると、学習は驚くほど簡単に止まります。仕事も同様ですね。「気づけば2週間、教材を開いていない」「最初に立てた完璧な計画が3日目に崩れて、そのまま全部やめてしまった」——私も何度も経験しました。
でも、止まる原因は意志の弱さではありません。計画の立て方にあります。
エンジニア時代に学んだ「アジャイル」という知恵
私は2010年頃、エンジニアとして「アジャイル開発」という進め方に出会いました(※)。ソフトウェアの世界では、数年分の完璧な計画を最初に立てるやり方は、失敗しがちです。代わりに、こう考えます。
- 計画は「仮説」。
ずれるのが前提で、ずれたら直せばいい - 全体はおおまかに、直近は詳しく。
大きな地図は最初に描き、作り込むのは1週間分だけ - まず70点で出して、あとで磨く。
完璧主義こそが、継続の最大の敵 - 一度にやることは1つ。
あれもこれもは、結局何も進まない
この考え方は、そのまま日々の学習に使えます。そしてAIは、この回し方の最高の相棒になります。手順は3つです。
手順1 AIと「全体の地図+今週のプラン」を作る
最初に、ゴールまでの全体のおおまかな計画を立てます。ゴールと週ごとの通過点が見える程度で十分です。そして、詳しく作り込むのは今週の1週間分だけ。次のプロンプトをコピペして、自分の状況に書き換えて使ってください。
あなたは私の学習コーチです。
まず、ゴールまでの全体のおおまかな計画(ゴールと週ごとの通過点)を作ってください。
そのうえで、今週1週間分だけ、詳しい学習プランを作ってください。
・ゴールは「1か月後までに放送授業を第10回まで視聴する」です(ご自身のゴールに書き換えてください)
・科目は「データサイエンスの基礎科目」です(ご自身の科目に書き換えてください)
・使える時間は平日1日15分、土曜だけ1時間です
・1日にやることは1つだけに絞ってください。
完璧でなくても合格とする「70点ライン」も一緒に教えてください。
ポイントは「1日15分・やることは1つ」。小さすぎると感じるくらいが、ちょうどいいのです。全体計画のほうは「あとで直す前提の下書き」と割り切ってください。週ごとに見直すので、最初から作り込む必要はありません。
手順2 毎朝、AIに「今日やること」を聞く
プランを作ったチャットは消さずに残しておき、毎朝同じ場所で「今日は何をやる日? 最初の15分でやることだけ教えて」と聞きます。これでAIがリマインダー兼ペースメーカーになります。この段階では、AIとチャットするだけで十分です。「自分から聞きに行く」というひと手間は残りますが、まずはこの型に体を慣らしてください。カレンダーやメールとつないで、AIに秘書のような役割をしてもらう応用は、次回お話しします。
手順3 週末はAIと「KPT」で振り返る
アジャイルの心臓部は振り返りです。私はKPT法というシンプルな型を10年以上、毎週・毎月使い続けています。
- K(Keep)=良かったこと、続けたいこと
- P(Problem)=うまくいかなかったこと
- T(Try)=次に試したいこと
週末に1回、その週のKとPを箇条書きでAIに送り、「Tを一緒に考えて、来週のプランを修正して」と頼みます。コツは1つだけ。KeepをProblemと同じ数だけ挙げること。振り返りは放っておくと反省会になり、続かなくなります。よくあるのは、Problemだけになってしまう振り返り。あなたの振り返りは大丈夫ですか?
週の振り返りのついでに、最初に描いた全体の地図とのずれも確認して、通過点ごとAIに引き直してもらいましょう。
続かなかった週こそ、AIの出番
もし1週間まるごと止まっても、それは失敗ではなく「仮説が外れた」だけです。「今週は全然できなかった。原因を一緒に整理して、もっと軽いプランに作り直して」とAIに相談してください。責めずに、淡々と計画を直す。挫折しない人は意志が強い人ではなく、立て直しの手順を持っている人です。今まで、個人でやっていた振り返り。AIが客観的に判断してくれるので、振り返りの質が上がりました。
社会人の実務ではこう使う
私はこの「週間プラン→毎朝の確認→週末KPT」を、仕事でもそのまま回しています。案件の段取り、メルマガの執筆、チームの改善会議まで、すべて同じ型です。学習用に身につけた小さなアジャイルの型は、そのまま仕事の型になります。
参考文献
※ 本文で紹介した「アジャイル」の考え方の原典です。4つの価値と12の原則が1ページにまとまっています。日本語訳もあります。
日本語版 アジャイルソフトウェア開発宣言 https://agilemanifesto.org/iso/ja/manifesto.html
次号予告
次回は「AIをGmail・Googleカレンダーにつなぐ——チャットから一歩進んだ学習秘書」。AIが自分の予定やメールを読めるようになると、「今日の15分」の中身がぐっと現実的になります。その次の第4回では、決まった時間にAIのほうから動いてくれる「自動化」までお届けします。