第3回 AIをGmail・Googleカレンダーにつなぐ——チャットから一歩進んだ学習秘書

AI活用支援の実務家に聞く AIと一緒に学ぶ
佐藤 雄大(ブリッジドット株式会社 代表取締役)
ブリッジドット株式会社代表取締役の佐藤雄大です。教育工学が専門。AI活用支援を本業とする実務家として、放送大学、数理・データサイエンス・AI講座のWebサイト運営にも携わっています。本ニュースレターでは、毎号1テーマで「AIを学びの相棒にする」ためのヒントをお届けします。
前回は、AIとチャットするだけで学習ペースを保つ方法をお届けしました。今回はそこから一歩進めて、AIに自分の「予定」と「メール」を見せます。空き時間に合った学習プランを出してもらい、埋もれがちな締切を拾ってもらうためです。設定は10分ほど。プログラミングは不要です。
第3回 AIをGmail・Googleカレンダーにつなぐ——チャットから一歩進んだ学習秘書
チャットだけのAIは、あなたの予定を知りません。カレンダーとメールをつないで、AIを現実に合った「学習秘書」にする3つの手順と、つなぐ前に知っておきたい3つの約束をお届けします。
チャットだけのAIは、あなたの予定を知らない
前回の「毎朝、今日やることを聞く」を続けていると、あるもどかしさに気づきます。AIは「今日は会議が3本ある」ことも、「レポートの締切が来週に迫っている」ことも知りません。こちらが毎回説明しなければ、現実からずれたプランが返ってきます。
私が仕事でAIを「秘書」として頼れるようになったのは、カレンダーとメールをつないでからでした。AIが自分の予定を読めると、「今日は夜しか空いていないから、寝る前の15分で第5回の後半だけ」というように、答えが現実に合ったものになります。締切の連絡メールを見落とすことも減ります。
「つなぐ」とは何をしているのか
仕組みはシンプルです。AIに「あなたのGoogleアカウントの、カレンダーとメールを読んでよい」という許可を与えているだけです。創刊号で少し触れたAPI(サービス同士をつなぐ仕組み)が裏で働いています。ChatGPT、Claude、Geminiといった主要なAIサービスには、いずれもGmailやGoogleカレンダーとつなぐ機能があります。呼び名は「コネクタ」「拡張機能」「アプリ連携」など各社で違いますが、やっていることは同じです。
画面や名称は頻繁に変わるので、ここでは特定の手順書ではなく、どのサービスでも共通する「型」をお伝えします。実際の設定画面は、お使いのサービスの公式ヘルプで確かめてください。
手順1 まず「読む」だけの許可でつなぐ
AIサービスの設定画面から「Googleカレンダー」「Gmail」を選び、Googleアカウントでログインして許可します。このとき、選べるなら「読み取りのみ」から始めてください。予定の作成やメールの送信は、慣れてから足せばよいものです。最初の許可は最小限に。これは実務でも同じ鉄則です。
つないだら、まず次のプロンプトで「ちゃんと読めているか」を確かめます。
私のGoogleカレンダーを見て、今週の予定を曜日ごとに一覧にしてください。
そのうえで、平日ごとに「学習に使えそうな15分の空き時間」を1つずつ提案してください。
・朝の通勤前、昼休み、寝る前など、私の生活リズムに合った時間帯を選んでください
・予定が詰まっている日は「今日は休む日」と正直に言ってください
返ってきた空き時間が、実際のカレンダーと合っているか、自分の目で確かめてください。AIは予定を読み違えることがあります。ここで確かめる一手間を惜しまないのが、このニュースレターのスタンスです。
手順2 メールから「締切」を拾ってもらう
次はGmailです。授業の案内、レポートの提出期限、試験の日程。学びに関わる大事なメールは、日々のメールに紛れて埋もれがちです。これをAIに拾ってもらいます。
私のGmailで、直近1か月に届いたメールから、授業・レポート・試験の締切や日程に関するものを探してください。
・件名、差出人、締切日を表にまとめてください
・締切が近い順に並べ、2週間以内のものには「⚠」を付けてください
・見つからない場合は「該当なし」と正直に答えてください
「正直に答えて」と毎回添えているのには理由があります。AIは、見つからないときにもっともらしい締切を作ってしまうことがあるからです。表ができたら、元のメールを開いて日付を照らし合わせましょう。
手順3 前回のプランを、カレンダーに「書く」
読むことに慣れたら、書き込む許可を足します。前回作った「今週の学習プラン」を、そのままカレンダーに転記してもらいましょう。
先ほど提案してくれた平日の空き時間に、今週の学習プランを15分ずつの予定として入れたいです。
まず、登録する予定の一覧(日時・タイトル)を見せてください。
私が「OK」と言ってから、カレンダーに登録してください。
「私がOKと言ってから」が肝心です。カレンダーに書き込む、メールを送るといった「取り消しにくい操作」は、必ず自分が最後に確認する形にしてください。AIに全部任せて、予定が二重に入ったり、送るつもりのないメールが飛んだりするのは、実務でも本当に起きる失敗です。
つなぐ前に知っておきたい3つの約束
- 許可は最小限に。
まず読み取りだけ。書き込みは慣れてから - 取り消せない操作は、自分で確認してから。
送信・削除・予定の変更はAIに丸投げしない - 使わなくなったら、接続を切る。
メールや予定には、自分だけでなく相手の情報も含まれています。共有のパソコンでは使わない
メールやカレンダーは、自分の生活そのものです。だからこそ、つなぐと本当に便利になりますし、だからこそ丁寧に扱う必要があります。
社会人の実務ではこう使う
私は毎朝、AIに「今日のカレンダーと未読メールを読んで、優先順位つきのToDoを3つ出して」と頼むところから仕事を始めています。会議の合間の空き時間、返信を待たせている相手、今日中に返すべき依頼。これらをAIが一覧にしてくれるだけで、朝の30分が浮きます。ただし、返信の送信ボタンは必ず自分で押します。この線引きを守っているから、安心して任せられるのです。
次号予告
ここまで来ても、まだ「毎朝、自分からAIに聞きに行く」必要があります。次回はその手間をなくします。「頼まなくても動く——AIを決まった時間に自動で動かす」。エンジニアが50年近く使ってきた「cron(クーロン)」という知恵を、学びに応用します。