第4回 頼まなくても動く——AIを決まった時間に自動で動かす

AI活用支援の実務家に聞く AIと一緒に学ぶ
佐藤 雄大(ブリッジドット株式会社 代表取締役)
ブリッジドット株式会社代表取締役の佐藤雄大です。教育工学が専門。AI活用支援を本業とする実務家として、放送大学、数理・データサイエンス・AI講座のWebサイト運営にも携わっています。本ニュースレターでは、毎号1テーマで「AIを学びの相棒にする」ためのヒントをお届けします。
第2回はチャットだけ、第3回はメールとカレンダーにつなぎました。3回続きの最終回は「自動化」です。毎朝AIに聞きに行くのではなく、AIのほうから来てもらいます。
第4回 頼まなくても動く——AIを決まった時間に自動で動かす
毎朝AIに聞きに行かなくても、決まった時間にAIのほうから「今日の一歩」が届く。エンジニアの50年ものの知恵「cron」を学びに持ち込む2つの手順と、自動化で失敗しないための3つの教訓をお届けします。
「聞きに行く」が続かない理由
前回までの型には、正直に言うと、ひとつだけ弱点があります。毎朝、自分からAIのチャット画面を開かなければならないことです。忙しい朝ほど、その一手間が抜けます。抜けた日が2日続くと、そのまま止まる。第2回でお話しした「あるある」が、形を変えて戻ってきます。
私が仕事で本当に助かっているのは、AIが「決まった時間に、勝手に動いて、結果だけ届けてくれる」仕組みです。今回はこれを、学習に持ち込みます。
cron(クーロン)——エンジニアの50年ものの知恵
エンジニアの世界には、1970年代から使われ続けている「cron」という仕組みがあります。「毎朝7時にこれを実行して」「毎週日曜の夜にあれをやって」と、時刻と仕事を一行で登録しておくと、コンピュータが黙って繰り返してくれるものです。
今は、ChatGPT、Claude、Geminiなど主要なAIサービスにも、「決めた時刻にプロンプトを自動実行する」機能が備わってきています。名称は「タスク」「スケジュール」「ルーチン」などさまざまですが、中身はcronそのものです。
自動化の設計は「いつ・何を見て・何をして・どこに届ける」
自動化を組むとき、私は必ず4つに分けて考えます。
- いつ(トリガー)
毎朝7時、毎週日曜20時、など - 何を見て(入力)
カレンダー、メール、前回作った学習プラン - 何をして(処理)
今日やることを1つ選ぶ、締切を拾う、振り返りを促す - どこに届ける(出力)
メール、スマホの通知、チャットへの投稿
この4つが埋まれば、自動化はほぼ完成です。
逆に、どれか1つでも曖昧だと、動いてはいるのに役に立たない自動化になります。
手順1 「今日の一歩」を毎朝届けてもらう
前回までに作ったものを、そのまま自動化に載せます。お使いのAIサービスのスケジュール機能(タスク、ルーチンなど)を開き、次のような指示を登録してください。
毎朝7時に、次のことをしてください。
①私のGoogleカレンダーを見て、今日の空き時間を確認する
②このチャットの先頭にある学習プランから、今日やることを1つだけ選ぶ
③「今日の一歩」として、やること・所要時間・始める時刻を3行でまとめて、私に通知する
・予定が詰まっている日は「今日は休む日」と伝えてください
・長い説明は不要です。3行で
翌朝、通知が届いたら成功です。届かなければ、サービス側の設定(通知の許可など)を確かめてください。最初の1週間は「ちゃんと届くか」を見るだけで十分です。
手順2 締切の「見張り番」を置く
前回のGmailの締切拾いも、週1回の自動実行にしてしまいましょう。
毎週月曜の朝8時に、私のGmailから授業・レポート・試験の締切に関するメールを探し、2週間以内に締切があるものを一覧にして通知してください。
該当がなければ「今週は締切なし」とだけ伝えてください。
「なければ、なしと言う」を必ず入れておきます。何もないときに沈黙する自動化は、動いているのか壊れているのか区別がつかないからです。
自動化の落とし穴——実務で学んだ3つの教訓
ここからは、私が仕事の現場で痛い目にあって学んだことです。
- 読まれない自動化は、止める。
通知が増えると、人は読まなくなります。学習用の通知は1日1本まで。増やすより減らす - 自動化は、静かに壊れる。
ある日こっそり止まります。週に1回「今週もちゃんと届いたか」を確認し、月に1回、要らなくなったものを棚卸しする - 取り消せない操作は、自動化しない。
メールの送信、予定の削除、課題の提出。これらは必ず最後に人が確認する
3つ目がいちばん大切です。AIはもっともらしい間違いをします。自動化は、その間違いを毎日正確に繰り返す道具にもなり得ます。「確かめる一手間」を、自動化の中にも必ず残してください。
社会人の実務ではこう使う
私の会社では、毎朝のメールとカレンダーの整理、週次の数字のまとめ、メルマガのネタ集めといった作業を、この型で自動化しています。人がやるのは、届いた結果を読んで判断することと、送信ボタンを押すことだけ。「AIに全部やらせる」のではなく、「AIに段取りをさせて、人が決める」。この線引きが、3回シリーズを通してお伝えしたかったことです。