第12回 AIサービスロボットの急速な進展

GPTの進化と今後の展望
山口 高平(神奈川大学 教授)
放送大学では、数理・データサイエンス・AI講座で「言語生成 AI の機能と社会への応用」を公開しています。本ニュースレターでは、山口先生の講義収録後のGPTの最新情報を随時みなさまへ提供します。生成AIに関する情報をupdateするためにぜひ活用してください。
山口先生は、放送大学 数理・データサイエンス・AI講座で「AIプロデューサ〜人とAIの連携〜」「言語生成 AI の機能と社会への応用」を担当しています。また、放送大学の総合科目「AIシステムと人・社会との関係('20)」の主任講師です。
第11回ニュースレターでは、2025年8月に米国で公開された生成AI「GPT-5」について解説しました。
今回は、昨年頃より、米中で急速に開発が進んでいる、「AIサービスロボット」について解説します。AIサービスロボットは、2025年11月より公開された新しい生成AI「GPT-5.1」を利用して、研究開発が急速に進もうとしています。以下、専門的分野にも触れますが是非ご一読ください。
第12回 AIサービスロボットの急速な進展
技術動向:ロボットレストランの普及の違い
ロボットレストランは、2010年代前半より、東南アジア(日本、中国、ドバイなど)で利用され始め、2018年頃より配膳ロボットが登場し、2024年頃より、日常的に、多くのファミリーレストランで配膳ロボットを見かけるようになってきました。しかしながら、欧米では、ロボットレストランの普及はかなり遅れています。この理由をGPT-5.1に尋ねると表1のような回答が得られました(一部加筆修正)。特に、欧米では、人と人の対話に価値があり、レストランの接客においても、ロボットによる機械的対応は好まれず、人による接客を重視するという文化慣習が大きいことがあげられます。イギリスでは、ロボットバーの実験店がオープンしましたが、SNSで話題になっただけで、バーでは「バーテンダーの会話」に文化的価値があると批判され、すぐに閉店されてしまいました。また、ドイツでは、コロナ禍の接触規制でロボットレストランが注目されたが、来店客から「ロボットによる接客は冷たい」と非難され、食品安全規制等が厳しいこともあり、継続できませんでした。

| 普及要因 | 東南アジア(普及) | 欧米 |
|---|---|---|
| 人手不足 | 人手がかなり不足 | 人手不足ではない (コスト問題だけ) |
| ロボットコスト | 安い・早い・回収しやすい | 高い・回収しづらい |
| 店舗構造 | ロボット移動容易 | ロボット移動困難 |
| 店舗文化 | ロボット接客歓迎 | 人の接客に価値がある |
| 規制 | 緩い | 厳しい |
| チェーン店構造 | 大規模で標準化 | 小規模で多様 |
生成AIとサービスロボット
我が国では、上述した通り、ロボットレストランは実用段階に入ってきましたが、店舗への全面展開にはまだ課題があり、自然対話・動作設計・動線最適化・顧客体験向上などが、生成AIとサービスロボットの連携により実現されることが期待されています。以下、GPT-5.1の回答に基づいて、これらの課題対応方法やその効果について説明します。
(1) 自然対話・会話型接客
生成AIが、「いらっしゃいませ」「メニューのご案内」「お勧めメニューの説明」のような、来店客に対する挨拶文を自動生成し、サービスロボットがそれを発話します。この時、対話内容・質問応答・お客様の好み・業務フローに応じて、生成AIが発話内容を動的に変更するので、接客の質が高まり、接客好感度が向上することが期待されています。
(2) 注文受付・応答文発話
生成AIが、来店客からの「~をお願いします」「こちらを注文したいです」などの依頼文を理解して、注文を受け付け、その応答文を自動生成して、サービスロボットが、それを来店客に発話します。例えば、生成AIが「こちらは、只今少々お時間をいただきますが、よろしいでしょうか」「代替案としてこちらもおすすめです」のような応答文を生成し、サービスロボットがその応答文を来店客に発話します。
(3) 感情表現(tone(トーン)とintensity(強度)の制御)
ロボット接客において「子ども連れ」「高齢者」「団体」「カジュアル利用」などの状況変化に応じて、生成AIが発話文を制御します。GPT-5.1 は、人間の感情表現の主構成要素であるtone(トーン)とintensity(強度)を扱うことができます。トーンとは、敵対か協調の感情に依存して発話文が変わることであり、例えば、相手の行為の理由を尋ねるとき、敵対トーンなら「なぜ、そんなことをしたの?」と尋ね、協調トーンなら「どうしたの?何か困ったことがあった?」のような発話文になります。また、強度とは、感情の強さ(どれくらい強く言うか)を表現し、例えば、怒りの表現の場合、弱い怒りなら「ちょっと困ります」、強い怒りなら「絶対にやめてください!」のような発話になります。
(4) 動作/サービスフローの生成と最適化
配膳ロボットの運搬ルート・タイミング・停留位置等を、生成AIと最適化アルゴリズムを連携させて設計し、店舗動線に適応させます。この結果「無駄な待機」「人との接触渋滞」「衝突リスク」の低減が期待されます。
(5) 顧客反応解析/改善案提示
生成AIが、会話ログ・ロボット動作ログ・顧客満足度アンケート等を分析し、「どのロボット発話/動作が満足度を上げているか」を定量化します。本方法を導入した店舗では「子ども連れの入店客が~%増加」「スタッフ歩行数が~%削減」という定量成果が報告されています。
次回の予告
山口先生の生成AIニュースレターの発行は、今回で一旦終了となります。ただ、生成AIの進歩は日進月歩ですので、2026年度中に再開いただく予定です。どうぞお楽しみに!